
「お金を払って作ってもらったんだから、ホームページは自分のものだ」
そう思っていませんか。
実は、これが大きな落とし穴です。制作費を支払っても、著作権や所有権が制作会社側に残ったままになっているケースは珍しくありません。
気づくのは多くの場合、「別の業者に乗り換えたい」「制作会社が廃業した」「ドメインを移管したい」という、何か問題が起きたときです。
ホームページ制作を依頼する前に、著作権と所有権がどちらにあるかを必ず確認してください。この記事では、トラブルの実態と、依頼前に確認すべきポイントを具体的に解説します。
著作権と所有権、何が違うのか
まず、言葉の意味を整理しておきます。
著作権とは、ホームページのデザインやソースコード(プログラムの設計図)を作った人が持つ権利です。著作権は、作った瞬間に自動的に発生します。契約書がなくても、制作会社がホームページを作った時点で、制作会社に著作権が生まれます。
所有権とは、ドメイン(サイトのURL)やサーバー(データを保管する場所)といった「資産」を誰が持っているかということです。ドメインやサーバーは誰かのアカウントで管理されており、そのアカウントを持っている人が実質的な所有者です。
「お金を払ったのだから自分のもの」という感覚は理解できますが、著作権と所有権はお金を払うだけでは移転しません。契約で明確に定めない限り、制作会社側に残り続けます。
「お金を払えば自分のもの」は思い込みかもしれない
日本の著作権法では、著作権は別途の合意がない限り、制作した側(制作会社)に帰属します。制作費を100万円払っても、契約書に「著作権を譲渡する」と書いていなければ、デザインやソースコードの権利は制作会社のものです。
依頼者(あなた)が持つのは「このホームページを使う権利(利用権)」にとどまることがあります。制作物を使い続けることはできても、自由に改変したり、別の業者に渡してリニューアルを頼んだりする権限がない、という状態です。
「そんな話は聞いたことがない」という方も多いと思います。ホームページ制作は身近になった一方で、著作権や所有権の話はほとんどの人が聞かされないまま契約しています。
ホームページ制作で起きやすいトラブル4つ
著作権・所有権を確認しないまま制作を依頼すると、以下のようなトラブルが起きます。
トラブル1 ソースコードを渡してもらえない
リニューアルや別業者への移行を考えて「ソースコードのデータをください」と頼んだとき、「著作権はうちにあるので渡せません」と断られるケースがあります。
この場合、新しい業者に依頼しても「前のサイトをベースに直してほしい」ができません。一からサイトを作り直すことになり、余分なコストがかかります。
トラブル2 ドメインが制作会社の名義になっている
ドメイン取得を制作会社に任せた結果、制作会社のアカウントで管理されているケースがあります。
乗り換えや移行の際にドメインの移管を頼んでも、「手数料が必要」「移管はできない」などと言われることがあります。最悪の場合、長年使ってきたURLを手放さざるを得ない状況になります。
トラブル3 制作会社が廃業してサイトが消えた
制作会社が突然廃業・倒産すると、管理を一任していたサーバーやドメインの更新が止まり、ホームページが突然表示されなくなることがあります。
自分でサーバーのログイン情報もドメインの管理情報も持っていなければ、どこに問い合わせればいいかもわかりません。バックアップがなければ、それまでの全てのコンテンツが失われます。
トラブル4 制作会社と揉めた際に身動きが取れない
料金のトラブル・サポートへの不満などで制作会社との関係が悪化したとき、ソースコードやドメインを制作会社が握っていると、身動きが取れなくなります。
「別の業者に変えたい」と思っても、データがなければ移行できない。「解約したい」と言っても、ドメインを盾に交渉が難航する。こういった事態に陥るリスクがあります。
依頼前に確認すべき5つのポイント
トラブルを防ぐために、ホームページ制作を依頼する前に確認しておくべきポイントを5つ挙げます。
ポイント1 ソースコード・デザインの著作権はどちらにあるか
「制作物の著作権はどちらに帰属しますか?」と直接聞いてください。「依頼者に譲渡する」という制作会社もあれば、「弊社が保持する」という制作会社もあります。
著作権を依頼者に譲渡してもらう場合、追加費用が発生することがあります。費用がかかっても、譲渡してもらった方が将来の選択肢が広がります。
ポイント2 ドメインの名義・管理権限
ドメインは自分で取得・管理することを強くおすすめします。お名前.com・ムームードメイン・Xserverドメインなど、自分でアカウントを作ってドメインを取得すれば、制作会社が変わっても影響を受けません。
制作会社にドメインの取得を代行してもらう場合は、「名義は私の名前にしてください」「アカウント情報を共有してください」と伝えましょう。
ポイント3 サーバーアカウントの名義
サーバーも同様です。エックスサーバー・ConoHa WING・ロリポップなど、自分でサーバーを契約してアカウントを持っておくと安心です。制作会社がサーバーを管理してくれていた場合でも、ログイン情報は必ず自分でも把握しておきましょう。
「サーバーのログイン情報を教えてください」と聞いて答えてもらえない制作会社とは、契約しない方が無難です。
ポイント4 WordPressの管理者権限
WordPressを使ったサイトの場合、WordPressの管理画面へのログイン情報を自分で持っているかどうかを確認してください。
管理者権限がないと、自分でブログを投稿できない・プラグインを更新できないなど、日常的な運用に支障が出ます。制作完了後に「管理者ユーザーのアカウントを発行してください」と依頼するか、最初から自分が管理者として運用できる形で納品してもらいましょう。
ポイント5 バックアップデータの管理
サイトのバックアップデータを誰がどこに保管しているかを確認してください。
バックアップが制作会社のサーバーだけにある場合、制作会社との関係が切れるとバックアップも失います。定期バックアップを自動で取るプラグイン(UpdraftPlusなど)を使って、自分のストレージ(GoogleドライブやDropboxなど)にバックアップが保存される仕組みを作っておくことをおすすめします。
契約書で確認・明記してもらうべきこと
口頭の約束では後から「言った・言わない」になりかねません。以下の内容を契約書に書いてもらうか、書面で確認してください。
- 著作権の帰属先(依頼者か制作会社か)
- ソースコードの納品方法と範囲
- ドメイン・サーバーの管理者名義
- 解約・乗り換え時のデータ引き渡し条件
契約書がない場合や、内容が曖昧な場合は、メールで「以下の点を確認させてください」と送っておくだけでも記録になります。
よくある質問
Q: 著作権を譲渡してもらうと費用が高くなりますか?
A: 制作会社によって異なります。「著作権込みの料金」として設定している会社もあれば、別途「著作権譲渡費」を請求する会社もあります。費用が増える場合でも、将来の乗り換えや改修の際に自由が利くメリットは大きいです。費用対効果を踏まえて判断してください。
Q: ドメインを自分で取得するメリットは何ですか?
A: ドメインを自分で管理することで、制作会社が変わっても同じURLを使い続けられます。URLは名刺・チラシ・SNSプロフィールなど多くの場所に掲載しているため、変更するとあらゆる媒体を更新しなければなりません。特にGoogleの検索評価もURLに紐づいているため、URL変更はSEO面でも大きなダメージになります。
Q: 既に制作会社に全て任せている場合、どうすればいいですか?
A: まずは現状を把握することから始めてください。「ドメインはどこで管理されていますか」「サーバーのログイン情報を教えてください」「WordPressの管理者アカウントを追加してください」と問い合わせてみましょう。この質問に答えてもらえない・はぐらかされる場合は、将来のリスクとして念頭に置いておく必要があります。
Q: 格安の制作会社は著作権が特に曖昧なことがありますか?
A: 費用の高低よりも、契約書の有無と内容の方が重要です。高額な制作会社でも著作権の扱いが曖昧なことはありますし、格安でも明確に対応してくれる会社もあります。金額ではなく、「契約書を用意しているか」「著作権と所有権について明確に説明してくれるか」で判断してください。
まとめ
ホームページの著作権と所有権は、何も確認しなければ制作会社側に残ります。制作費を払っても、ソースコード・ドメイン・サーバーの権限が制作会社にあるまま使い続けているケースは非常に多いです。
問題が起きるのは、乗り換えたいとき、廃業されたとき、揉めたときです。その時点で初めて気づいても手遅れになることがあります。
依頼前に確認すること——ドメインは自分で取得すること、WordPressの管理者権限を持つこと、著作権の帰属を書面で確認すること——この3点だけでも実践しておくと、将来の選択肢が大きく広がります。
