
「ホームページを作ってもらったけど、自分では何も変えられない」「ちょっとした修正をするだけで費用が発生する」「制作会社に連絡してもなかなか返事が来ない」
こうした状況に置かれているホームページオーナーは、思っているより多いです。その多くは、制作会社だけが管理画面のパスワードを持ち、自社では管理画面に入れない状態になっています。
ホームページを外注したからといって、管理画面へのアクセスを制作会社に任せきりにするのはやってはいけない依頼方法のひとつです。どういうリスクがあり、どうすれば防げるかをお伝えします。
管理画面を制作会社だけに持たせると何が起きるか
管理画面のログイン情報を制作会社だけが管理している場合、ホームページ上で何かを変えたいと思うたびに制作会社に連絡しなければなりません。
電話番号が変わった。定休日が変わった。新しいサービスを追加した。料金表を更新したい。プロフィール写真を差し替えたい。こうした小さな更新のひとつひとつに、メールや電話での依頼が必要になります。制作会社によっては作業が終わるまでに数日〜数週間かかることもあります。急いでいる内容でも待つしかない状態です。
さらに、小さな修正でも費用がかかる場合があります。ページの文章を数行直すだけで数千円〜数万円の修正費用が発生する契約も珍しくありません。自分で直せれば0円でできることに、費用と時間がかかり続けます。
また、制作会社との関係が悪化したり、サービスを解約したいと思っても、管理画面を相手が持っている限り立場が弱くなります。「解約するなら移行費用がかかる」「新しい会社への引き継ぎには対応できない」といった状況になるケースもあります。管理画面を相手に握られているということは、自社のホームページなのにコントロールが自社にない状態です。
WordPressで作ったのに管理画面に入れないのはおかしい
多くの格安ホームページ制作サービスで使われているWordPress(ワードプレス)は、本来「自分でサイトを管理・更新できる」というメリットのあるツールです。ブログを書く、文章を修正する、画像を差し替える、プラグインを追加する。これらを専門知識なしに管理画面上でできることが、WordPressが広く使われている理由です。
ところが、管理画面のパスワードが制作会社だけのものになっていると、これらのメリットをすべて捨てていることになります。
WordPressを使ったホームページ制作は、HTMLで手書きするだけの静的サイトと比べて費用が高くなります。WordPressのインストール・テーマの設定・プラグインの導入など、追加の手間がかかるためです。その追加費用を払っておきながら、「自分で更新できる」というWordPress最大のメリットを受けられていないとしたら、費用を無駄にしていることになります。
CMS(コンテンツマネジメントシステム)の意味は、サイトオーナーが自分でコンテンツを管理・更新できることです。管理画面に入れない状態では、CMSとしての機能を果たしていません。
WordPressの権限には種類がある
「制作会社からID・パスワードをもらっている」という方でも、どの権限で渡されているかを確認してください。WordPressには役割ごとに異なる権限が設定されており、権限によってできることが大きく変わります。
管理者(Administrator)
ホームページのすべての設定を変更できる最上位の権限です。プラグインのインストール・削除、テーマの変更、ユーザーの追加・削除、一般設定の変更など、あらゆる操作ができます。自社がこの権限を持っていない場合、大事な設定変更が自分ではできません。
編集者(Editor)
記事や固定ページの作成・編集・削除ができますが、プラグインの追加やユーザー管理はできません。ブログの更新程度は対応できますが、サイトの構造や設定には触れられません。
投稿者(Author)
自分が書いた記事の投稿と編集のみができます。固定ページの編集や他のユーザーの記事への操作はできません。
購読者(Subscriber)
ログインしてプロフィールを見る程度しかできない権限です。コンテンツへの関与はほぼありません。
編集者以下の権限しか与えられていない場合、新しいスタッフのアカウントを作ることも、プラグインの設定を変えることも、SSL証明書の更新対応もできません。「IDとパスワードをもらった」としても、管理者権限でなければ多くのことが制限されます。
制作会社のコントロール下に置かれる4つのリスク
管理画面のオーナー権限を制作会社だけが持っている状態では、具体的にどんなリスクがあるか整理します。
1つ目は、制作会社が廃業・閉業したとき
中小規模のWeb制作会社やフリーランスのWebデザイナーは、残念ながら廃業するケースがあります。制作会社が連絡つかずになった瞬間、ホームページの管理画面にも入れなくなります。サーバーやドメインの更新もできず、最悪の場合サイト自体が消える事態になります。
2つ目は、担当者が退職したとき
制作会社の中でもあなたの担当者が退職した場合、引き継ぎが不十分だと管理情報が宙に浮くことがあります。「前の担当者しか知らなかった」という事態は実際に起きています。
3つ目は、契約を解除したいとき
サービスの質に不満があっても、管理画面へのアクセスを渡してもらえない・移行費用を請求されるといった状況で身動きが取りにくくなります。新しい制作会社に依頼したくても、現状の制作会社の協力なしには引き継げないケースがあります。
4つ目は、緊急の対応が必要なとき
ホームページに誤った情報が掲載されてしまった、サイトに不正アクセスがあった、急いで情報を削除しなければならない。こうした緊急事態では、制作会社に連絡して返答を待つ時間がありません。自社で管理画面に入れれば数分で対応できることが、数時間〜数日待ちになります。
正しい依頼の仕方
管理画面のリスクを防ぐために、制作依頼の段階でやっておくべきことを3つお伝えします。
最初にやることは、契約前に「管理者権限を自社に渡してもらえるか」を確認することです。口頭や書面で明示的に確認しておくことで、後から「そういう契約になっていない」という話になるのを防げます。管理者権限を最初から渡さないという条件の制作会社であれば、その時点で判断材料になります。
次に、制作会社には別途アカウントを発行してもらうという形にするのがベストです。自社が管理者権限を持った上で、制作会社には制作・修正作業用のアカウントを別に発行する。作業が終わったらそのアカウントを削除または権限を下げることもできます。すべてを一つのアカウントで共有する必要はありません。
最後に、ログイン情報を自社で安全に保管しておくことです。管理画面のURL・ユーザー名・パスワード・サーバーのFTP情報・ドメインの管理会社情報。これらを紙またはパスワード管理ツールに記録し、担当者が変わっても引き継げる状態にしておいてください。
よくある質問
よくいただくご質問にお答えします。
Q: 制作会社に「管理者権限は渡せない」と言われました。これは普通のことですか?
A: 珍しいことではありませんが、受け入れる必要もありません。管理者権限を渡せない理由として制作会社が挙げるのは「誤って設定を壊されると困る」「セキュリティ上のリスク」などです。ただ、それは制作会社側の都合であり、あなたのホームページの所有権はあなたにあります。「自社でも管理者権限を持ちたい」という要望を伝えた上で、対応してもらえない場合は別の制作会社を検討することをおすすめします。
Q: 管理者権限を持つと、誤って設定を壊してしまいそうで怖いです。
A: そのリスクは確かにあります。ただ、リスクを避けるために権限を持たないという選択より、権限を持ちつつ「触ってはいけない設定」を制作会社から教えてもらうほうが現実的な対策です。ブログの更新・文章の修正程度であれば、管理者権限があっても壊れることはほとんどありません。定期的なバックアップを設定しておけば、万が一の際にも復元できます。
Q: 制作会社が廃業した場合、サイトを引き継ぐにはどうすればいいですか?
A: 管理者権限・サーバーのFTP情報・ドメインの管理情報の3つが揃っていれば、新しい制作会社に依頼してサイトを引き継げます。どれかひとつでも不明な場合は、サーバー会社・ドメイン会社に問い合わせることで情報を取り戻せる場合があります。普段から情報を自社で保管しておくことが、こうした事態への備えになります。
Q: 制作会社に権限を持たせたまま運用してきた場合、今からでも変えられますか?
A: 変えられます。現在の制作会社に「管理者権限のアカウントを自社用に作成してほしい」と依頼してください。応じてもらえれば問題解決です。応じてもらえない場合は、契約内容を確認した上で、サイトを別の制作会社に移行することも検討の余地があります。サーバーとドメインの情報が手元にあれば、サイト自体は移行できます。
Q: WordPressの管理者権限を持つためには技術的な知識が必要ですか?
A: ブログの投稿・文章の修正・画像の差し替えといった基本的な操作であれば、技術的な知識は不要です。管理画面は日本語で操作でき、直感的に使えます。プラグインの追加やテーマの変更は少し知識が必要ですが、そこまで自社でやらなくても、権限だけ持っておくことに意味があります。
まとめ
管理画面のパスワードを制作会社だけに持たせることは、自社のホームページなのにコントロールを手放すことになります。WordPressで作ったのに自分で更新できない状態は、CMSとして使っているとはいえません。
防ぐためにやるべきことは3つです。
- 契約前に管理者権限を自社に渡してもらえるか確認する
- 制作会社には作業用の別アカウントを発行してもらう
- ログイン情報・サーバー情報・ドメイン情報を自社で保管する
ホームページ制作は依頼して終わりではなく、作った後に自社でどう運用するかが集客に直結します。管理画面を自分で持つことは、その第一歩です。
